私は渋々頷いた。変人だらけのこの家族で、2対1という状況だ。まず勝てるはずがないもの。
「わ、わかったわよ。でもすぐに迎えに来てもらうようにしてもらって!
あと、謝ってよさっきのこと!」
由希の背後からそうお姉ちゃんに喚くと、
「ああ、悪かったね」
「お姉ちゃんじゃなくて、そっちの泥棒!」
指をさすと、泥棒がこちらを睨んだ。ひっ! 怖い!
お姉ちゃんは首を軽く傾げて、そうだねえと呟く。
「謝りなよ。悪いのはあんただ」
また日本語で言ってるし……。
通じないのが当然なので、泥棒は頭の上にハテナマークを浮かべている。
と、つかつかとお姉ちゃんが泥棒に近づき、無理にその頭を掴んで下へと押した。
「謝りな。わたしの妹に無体なことしたあんたが悪い」
「………………っ」
必死に頭を上げようとしているみたいだけど、泥棒はそれができないみたい。
困惑して私は由希を見ると、
「あっちゃー。美和姉、実はすごい怒ってんじゃないの?」
と、苦虫を潰したような声で小さく言う。
……怒って、るんだ。…………あのお姉ちゃんが?
や、でも……今までも、そうだったかも。私が危険にさらされると、すごい怒ってくれたし……。
………………うん。
じゃあ、いいか。
「も、もういいわよ、お姉ちゃん」
「土下座させるまで待っとくれよ」
「も、もういいからっ!」
このままだと無茶苦茶しそう!
慌てて止めると、「そうかい」とお姉ちゃんは手を離した。
解放された泥棒は息ができなかったらしく、激しくむせている。…………どういうことしたの、お姉ちゃんってば。
泥棒がまたお姉ちゃんに話しかけた。
「ああ? 用心棒なんてごめんだよ!」
冷たくそう言い放ってお姉ちゃんはさっさとリビングを出て行ってしまった。
……え? 用心棒頼まれたの?
え? ちょ、ちょっと待って。通訳いなかったらここ、成り立たないんじゃないの?
ちらりと泥棒を見ると、むすっとした表情でいる。ほらやっぱり怒ってるし!
「ゆ、由希は置いていかないわよね……?」
恐る恐る確認すると、弟はけろりと笑った。
「えー? 途中で止めてるフィギュア、作りたいんだけどー」
「そんなお人形遊びはあとでいいから!」
血の繋がった人間であるお姉さんと遊びましょう!
「えぇ? 亜矢姉、そんな人形遊びとか言ったら、その界隈の連中、すっげー怒るぜ?」
「ものの例えよ、ものの!」
緊急時だと気づきたまえよ、我が弟よ! なぜにいつもと同じペースなの、あんたは!
「放っておけばいいじゃん、こんな外人」
「なに言ってんのよ! 家の中をうろうろされたら嫌じゃない!」
「……そりゃそうだな。俺の部屋に入って来られたら抹殺ものだぜ?」
可愛い顔してなんとも怖いことを冷たい声で言うものだ。……やりそう、こいつなら。
ていうか、カオスと化してるあんたの部屋になんて、私なら絶対入りたいなんて思わないわよ?
「じゃ、テレビでも観てる? しょうがないから、姉孝行でもしてやるよ」
「ゆ、由希ぃ」
思わず涙ぐんで抱きつくと、
「……亜矢姉、相変わらずだな。いい具合なおっきさだ」
…………この変態!

