巻き込まれたくない。だからこれ以上、事情は聞かない。私はそう決めた。
 居候になったナギルのお世話は……なぜか、私と由希が担当になった。美和お姉ちゃんはそもそも面倒くさがりで、説明とか適当だしね……。
 ……めんどくさい。
 私だって、めんどくさいのよね、すっごく。
 由希は腕輪をもらった分は優しく接するつもりみたい……。あくまで「つもり」だ。最悪で、最低だわほんと。
 ナギルに興味津々で、由希は色々質問してたし、途中でデジカメ使って写真まで撮ってた。なにやってんだあいつ。
「ナギルは王位とかに興味はないわけ?」
 うぉぉい! いくら異世界の人でも一応その人王族でしょ? 敬うとか、ちょっとは気を遣うとかあるじゃないの!
 なんでそんなフレンドリーなのよ、由希!
 ナギルは由希の態度に無礼とは思わなくなったようで(どうやらそれがこっちの世界では普通だと勘違い)、さらりと「ないな」と応えた。
 頭に三角巾をつけ、手にはゴム手袋。エプロンまでつけてもらって風呂掃除とかやってもらってる……。だってできることが少ないんだもん、この人。
「面倒なだけだ。オレは補佐するほうが性格的に向いている」
「ふむふむ。補佐のほうへは興味はあるわけだ。
 あ、だから亜矢姉をお妃にしても大丈夫とか言ったわけ?」
「そうだ。庶民の娘を妃にもらえば反感は買うだろうが、オレの継承権は高くないのでな」
 ごしごし、とスポンジ片手に浴槽を洗っている王子様を、浴室の外から眺めていた由希が「へぇ〜」と薄く笑っている。
 くっそー。庶民で悪かったわね、庶民で! 日本のほとんどの人は「庶民」なんですけど! 庶民なめんなよ!
「まあ確かに庶民の娘が嫁さんなら、王位狙ってますとは思われないよな〜……普通は」
 そこまで簡単じゃないんだろうけどさー、と由希が洩らし、私は丸聞こえの会話を遮断すべく、リビングのドアを閉めた。
 だいたい由希のやつは洗う方法を指示しているだけで、何もしていない。……無駄話してないでなんとかしてあげればいいのに。……私もひとのこと言えないけど。
 そもそもなにがお妃なのよ。誰があんたなんかの嫁になるもんですか! 顔がいいのは認めるけど、最初の印象が悪い。悪すぎるもの。
 ………………そういえば、私、彼氏いない歴17年なんだわ。
 うわぁ……なんかそう思ったら途端に胃が痛くなってきた。おかしい……私、由希ほどとはいかないけど、平均値はいってると思うんだけど。
 ああ、やだやだ。こんなに暗くなってたら耐えられない。
 そういえばあの巨大インコはどうしてるんだろう。戻るってのもおかしいけど、帰ってからもう3日経ってるんだけど。
 ……無能なのかしら? いや、ありえる。だってインコだし、鳥頭だし、脳みそもそのくらいってこともありうるじゃない?
 はっ! なに真面目に考えてんのよ。あいつらは宇宙人なのよ? 異世界という名の地球外世界の生命体なのよ? あああああー! もうやだぁ!
 考えれば考えるほどにドツボだわ……。
 私はリモコンに手を伸ばした。
 スイッチを入れると、ちょうど気になっていたシリーズがやってた。あー……これ、助手と探偵くっつかないのかしら?
 いくら人気のシリーズとはいえ、出演者にも年齢という壁があるんだからやきもきさせないで欲しいんだけど……。
「王子!」
 にゅっ!
 という音がしそうな勢いで、画面からインコが顔を突き出した。
「ギャーああああああああああああああああああ!」
 あまりのことに悲鳴をあげてのけぞる私は、お姉ちゃんの真似をしてリモコンを投げつけた。けど、悲しいかな、私はノーコンであった。
「おや、アヤ様」
「いやあああああ!」
 奇声に近い絶叫をあげて、私はわたわたと逃げ出す。
 ソファの後ろに隠れて震えていると、リビングのドアが開いてナギルと由希が入ってきた。うお。雰囲気の違う美形が並ぶとすごい迫力。
 ……じゃない! そうじゃないでしょ、私!