「しっかし亜矢姉ってとことんトラブルメーカーだよね」
「なによ。なにが言いたいの?」
「見つかるの早すぎだよ。しかもこんな簡単に捕まってるし」
「……私のせいって言いたいわけ?」
「そうだよ。亜矢姉の不運吸引体質が悪い」
なにそれ。変な体質名、つけないでくれる?
顔をしかめると、由希が晴れやかに笑った。
「ま、俺は飽きないからいいけどさ。美和姉がいるから安心だし」
「まあね。お姉ちゃんがいないと思うと、ゾッとするわね」
多大な信頼を寄せられている木暮美和という人物は、やっぱり私だけじゃなくて由希にとってもメシアみたいね。
しばらく二人でしりとりとか、山手線ゲームをして過ごしていると、看守がやって来て鍵を開けた。出ろってことみたい。
そのままぴったりと三人ほどで包囲されて歩く羽目になった。ど、どこに行く気なのかしら?
地下牢から出されると、思わず太陽光に手をかざす。ま、まぶしい!
そうしていると背後から押された。わかってるって、歩けばいいんでしょ!
用意されていた馬車に無理やり乗せられる。馬車はそのまま発進した。
私と由希は並んで座ってるけど、向い側に見知らぬ人が二人ほどくっついている。……だれですかあなたたち。黒服着た、エイリアン退治のプロ?
やだなぁ、と思わず顔を逸らしていると、由希がにこにこと笑顔でいることに気づいた。明らかに友好的な態度だ。なに考えてんの?
しばらく馬車で進んで、やがて停車した頃には……たぶん、3時間は経ってたと思う。車だともっと早くて快適なのに。
降りろっていう動きでまた無理やり降ろされる。もう、なんなの一体!
降りた先には大きな屋敷があった。え? ど、どこ、ここ?
困惑していると、屋敷の玄関からなにかが出てきた。
「ぎゃああああああーっっ!」
悲鳴をあげて由希の後ろに隠れる。あ、頭がトカゲなんですけど! 怖いし、気持ち悪い!
私の奇声に周囲の人間はびっくりしたようでびくっとしている。由希だけは慣れたもので、平然としていた。
「ゆ、ゆゆゆ由希! と、トカゲ人間!」
「まぁインコさんもいるし、トカゲが居てもおかしくはないかなぁ」
「なんで楽しそうなの?」
「んー。美和姉いないから、ヤバめな感じがどうもね」
はあ? あんた危険な時は楽しいわけ? そんなマゾな体質じゃないでしょうが! あんたはサディストでしょ!
「ナギル様の婚約者のアヤ様ですね?」
ぎええええええーーー! こ、言葉が通じるじゃん!
「そうでーす。アヤ様と、その弟です」
こらぁあああ! なに勝手に返事してんのよ!
怒りで由希を揺するけど、無視された。
トカゲはうやうやしく頭を下げた。
「ある方の密命であなたがたをかくまうことにいたしました。ペキと言います。よろしくお願いします」
「折れちゃいそうな名前だね」
由希が本当に小さな声で呟く。聞こえたらどうすんのよ、あんたは!
「あ、ある方?」
恐る恐る尋ねる私に、ペキさんが小声で言う。
「第一王子、アルバート様です」
っ!
驚いて硬直してしまう私と違って、由希は「へぇ」と洩らした。
ナギルを可愛がっているという第一王子。でも、美和姉の直感では第五王子暗殺の犯人。
そ、そんな……。ど、どういうこと?
「ナギル様の婚約者様を第二王子から引き離すのが目的です」
屋敷へと案内しながら早口でペキさんが説明する。
でもその第二王子と第一王子に繋がりがあるのはわかってる。
あー、やだやだ! 巻き込まれるなんてまっぴらごめんよ!
*

